お奨め本メール
2001年10月〜12月
(01.10.7)
「三人のゴーストハンター【国枝特殊警備ファイル】」 我孫子武丸・牧野修・田中啓文 \1,900 集英社
ホラーです。
三人の作家がそれぞれ一人ずつの探偵(?)を担当した、連作短編集。
国枝特殊警備保障(有)。ビデオレンタルショップの二階にある、怪異現象専門のうさんくさい警備会社。
登場人物その一。洞蛙坊(とうあぼう)。
182センチ120キロ。四年前の事件以来、頭の右上が陥没し、顔の右半分が左側より2センチほど下がってるという奇怪極まりない面相をしている。
担当、田中啓文。
以前「銀河帝国の弘法も筆の誤り」を紹介したことがありますね。今回もパワー爆発です。
駄じゃれ、下ネタ、スカトロ満載。袈裟には「南無八幡大菩薩峠」。〈祓い〉の文言は「迷わず成仏しくさらんかい」。
File.7の〈月経冠〉には、夜中読んでて思わず大声で大笑いしてしまった。ああ、普段の私はこんなネタで笑ったりしないのに。こんなとこで笑ったなんて、私がすっごく品の無い人間みたいじゃないか〜(そのとおりと言う説も…)。我ながら不思議で仕方が無い。なんで田中啓文に限って、こんなに下品なのに笑えちゃうんだろう。うーん。
その二。比嘉薫(ひが・かおる)。
美形。4年前の事件で左眼と右腕をなくす。左眼は義眼、右腕は義手。
人の妄想をガラスの目で見る。なくした腕で振り払う。
担当、牧野修。
「MOUSE」を紹介したことがありましたよね。すごく昔だけど。
「MOUSE」もすっごく良くて、興奮したものだけど、今回も独特のムードを醸し出しております。はっきり言ってお耽美です。
眠りのタイミングを合わせて他人の夢の中に入り込むことができる。
すべては妄想の産物。引き起こすのは人の心。
妄想を閉じ込める。妄想でできた箱の中に。
「大丈夫。ぼくが愛してる。君のすべてを認めてる。だからおいで」
色っぽい〜〜〜〜っ! バケモノを抱きしめて、その耳元で囁く姿を思い浮かべたら、ぞくぞくっとしますよ。ああぁぁぁ、私の妄想が溢れてしまうぅぅぅ。
ラスト、山県匡彦(やまがたまさひこ)。
工学博士。元T工大教授。4年前の事件の後遺症で、記憶が途切れたり身体の感覚がなくなったりする。霊的な存在を信じない。すべては論理的な説明がつくと信じている。
担当、我孫子武丸。
この人は紹介したことないな。というより、そもそも私、この作家はほとんど読んでない。
ゲームソフト「かまいたちの夜」の原作やってます。
三人の中ではどうしても影が薄いなあ。一番まっとうなんですけどね。
この三人がかわるがわる事件を解決し、最終的には謎の4年前の事件に挑む。
三人の作家がそれぞれに完結編を書いてます。
それぞれのカラーの違いをお楽しみください。
(2001.10.14)
「骨董市で家を買う」 服部真澄 \1400 中央公論社
服部真澄。「鷲の驕り」「龍の契り」等を書いている、ハードボイルド女流作家です。
女性ながら、スケールの大きい国際的な謀略物を迫力あるタッチで書いてます。
で、本作はガラっと変わって、エッセイです。
読んでみると、服部真澄のご主人が、古民家に取り付かれ、家造りに取り付かれた妻をユーモラスに描いています。が、…たぶん、服部真澄本人だよなあ。旦那の視点を借りて書いたって感じ?
内容ですが、タイトルそのまま、骨董屋さんから古民家を買って移築するという話です。
これがまあ、トラブルの連続、次から次と厄介事が持ち上がる。
日曜日夜7時から中京テレビで「鉄腕ダッシュ!」って番組ありますよね。TOKIOのメンバーがやってるやつ。あの番組でときどき、ダッシュ村の古民家の移築やってるけど、見るたびにこの本を思い出すんだよねー。
ちなみにこの本は98年11月が初版。もう3年前の本ですね。
(2001.10.21)
「病気はなぜ、あるのか」 ランドルフ・M・ネシー&ジョージ・C・ウィリアムズ(長谷川眞理子・長谷川寿一・青木千里 訳) \4200 新曜社
たとえば感染症を起こすと熱が出ます。この熱は、細菌を殺すための体の防御機能である。だから解熱剤で最初から熱を下げてしまうと、治りが遅いという比較記録がある。
下痢・吐き気も同様。これは体内の異物を排出しようとする働きなので、薬で制御してしまうと、いつまでも体内に毒物が残ることになってしまい、治りが遅い。
ただし、だからといってなんでもかんでも熱を下げないほうがいい訳ではない、薬を使ったほうがいい場合だってもちろんある。
体の機能を損なうほどの高熱をほっとくなんてできないでしょう。とにかく下げる、とか、とにかく放っとく、とかじゃなくて、知識を持った上で判断することが大切である、という話でした。
病気のほかにも、たとえば痛みの感覚。これは不快である。
なぜこのような不快な感覚が残っているのか? 答、必要だから。
痛みを感じないという人が稀にいます。そういう人はたいてい30歳前に亡くなります。痛みがあるからこそ、痛みを避ける動きができる。危険を避けることができる。
人間の身体は完璧ではない。それは進化の過程で少しずつつじつまを合わせて出来上がってきたからだ。完璧な設計図が初めにあるわけではない。
遺伝子が己の遺伝子を残すために、有効だと思える戦略を残していった結果が今のわれわれの身体だ。
たとえば食道は気管と交差する。のどを詰まらせるのはそのためだ。鼻腔が首のどこかにでもあれば安全なのだが、そうはならない。
原初の生物は、あまりに小さかったので呼吸システムは必要なかった。水中から「ふるい」をかけて微生物を濾しとる際、水中の気体が拡散するだけで充分だった。
進化して大きくなるにつれ、「ふるい」が変化して、今の呼吸システムになっていく。そんなときにこのまま進化すると将来不便だから違うところに引っ越そう、なんてシステムが考える訳がナイ。
できるだけ小さな変更で何とかしのごうとする妥協の連続によって、今の肉体はできている。
おもしろーい。
こーゆー本って大好き(^_^)。
(2001.10.28)
「ブルーもしくはブルー」山本文緒 \1,165 宙(おおぞら)出版
佐々木蒼子29歳。夫には恋人がいる。蒼子にも。夫婦の会話は絶えて久しい。
パートの収入はすべて小遣いになり、金銭的に不自由は無い。
ある日、不倫旅行のサイパン帰り、台風のため福岡着となる。
福岡には結婚前に付き合っていた男が住んでいる。彼のプロポーズを断って、今の夫と結婚した。あのときの選択は間違っていたのだろうか。もしあの時、彼のプロポーズを受けていたら。今ごろどんな人生だったろうか。
昔を思い返す蒼子の前を、一組の男女が通り過ぎた。男は昔の恋人だった。
偶然に驚き、後をつけた。連れの女性が蒼子に気づき、男と別れてから蒼子に向き合う。
向かい合う二人の女性。
同じ顔、同じ過去を持ち、記憶を共有する二人。
男のプロポーズを断ったあと、蒼子は二人に別れた。
ここには、自分が選ばなかったもうひとつの人生を歩むもう一人の自分がいる。
夫に省みられず、外に恋人を作って気晴らしをするような人生でなく、ちゃんと愛し愛される人生がある。
隣の芝生は蒼く見える。
目のくらんだ蒼子の選択。
誰でも振り返って一度や二度(いや、三度や四度や…数え切れないくらい?)、「あの時ああしていたら」という経験があるはず。そのとき本当にそうしている自分が存在したら。
そこは私がいるべき場所。
それは私が味わうべき幸せ。
…本当に?
(2001/11/4)
「波のうえの魔術師」石田衣良 \1333 文藝春秋
「池袋ウエストゲートパーク」の石田衣良、意外にも新作は経済モノです。
一般的な経済小説とは違うけど。
プータローしてた白戸則道は、ある日小塚泰造という老人に「ぼくの秘書にならないか」と声をかけられる。
小塚老人の下で株式市場について学ぶ白戸。
「人間よりも数字が大切な人とは付き合えない」と彼女に逃げられたりもしながら、確実に経済の波が見えるようになっていく。
小塚老人は、その波のうえを自在に乗りこなす魔術師だ。
そして二人は、某大手銀行を相手にとって、大勝負に出る。
小塚老人が白戸青年に、なぜ彼を選んだかを説明するシーン。
「本当に貧しい人というのは、みんなといっしょに貧しい人間のことだ。ひとりきり孤独に貧しいものは、まだ金をつくっていない金持ちにすぎない」
ロシアの小説家の言葉だそうだけど、「罪と罰」あたりで出てくるんですかね。
妙に印象に残ったセリフだ。
波という抽象的な言葉で説明しているとおり、この小説を読んでも経済とは何か、株価の変動とは、なんてことが分かるわけじゃありませんが、雰囲気はよくでてる。
いやあ、石田衣良、多才だぜ。
(2001/11/11)
「神の狩人 上・下」グレッグ・アイルズ 各\800 講談社文庫
コンピュータ・ネットワーク『EROS』。そのサイトでは、五千人の男女がセックスを論じていた。
入会金が千ドル、毎月の会費が五百ドルという高級会員制ネットワークの会員が、知らないあいだに次々と殺される。
昼は投資家、夜はシスオペとして『EROS』を管理するハーパー・コールは偶然事件に気づいて警察に通報。
FBIの特別捜査官、精神科医のアーサー・レンズ博士は、犯人を罠にかけるべく画策するが、恐るべき知能の持ち主である天才殺人鬼はやすやすと裏をかく。
インターネット・サイコキラー小説は数あるけれど、これは中でも面白い方だと言えると思う。
ごめんなさい! 今日は短い!
(2001/11/18)
「センセイの鞄」川上 弘美 \1400 平凡社
37歳のツキコさんは駅前の行きつけの居酒屋で、高校時代の国語の教師と出会う。
酒の肴の趣味が似ている人だなあと思ったら、突然「大町ツキコさんですね」と話しかけられた。
肴の趣味だけでなく、人との間(ま)のとりかたが似ていて、歳は離れていても「同じ歳の友人よりもいっそのこと近く感じる」。
その人との間のとりかたというのがつまり、
「代金はセンセイが払った。次に同じ店で会って飲んだときには私が勘定をした。三回目からは、勘定書もそれぞれ払うのもそれぞれになった」
こういう関係は確かになかなか、簡単なようで難しい。
こういう関係が続くあたり、この二人はそれぞれひとりで完結している性格なのである。なのであるが、二人で過ごす時間は、確実に二人のあいだで共有される。
大人のための恋愛小説であるなあ、と思う。
しみじみと、心に沁みます。
人との間のとりかた、つまり、不器用なんですね。
ツキコさんは途中高校時代の同級生に言い寄られたりもするんだけど、37歳バツいちの男はオトナなんである。対してツキコさんはというと、どうも子供じみている。
同級生がいい人だということは分かる。一緒にいて気安い。だから、どうしていいかわからない。
…わかるんだよなあ、こういう気持ち。
センセイの鞄。どこに行くにも持ち歩いていたセンセイの鞄。
二人が過ごした、あわあわとそして色濃く流れていった五年の月日――。
(2001/11/25)
「禍記(まがつふみ)」田中啓文 \1,600 徳間書店
田中啓文は駄じゃれと下ネタとスカトロばかりの人ではないことを証明しよう。
(いや、こだわってるのは私だけなんだろうけど)
まっとうなホラーである。
そう、私が田中啓文を知ったのも「水霊(みずち)」という正当ホラーであった。これも大変恐くて良かった。キャラ的に好みでなかったので、小説としての評価は(私の中では)低かったけど、ホラーとしてはなかなかでした。
水を呑むのが恐くなる・・・。それがミネラルウォーターであっても。
今回の「禍記」は短編集なのだが、連作集風にまとめてある。
なかでも「怖い目」が本当に怖い。怖いのと気持ち悪いのと。ヒャクメ様、不気味だー。なめくじが食べられなくなる・・・って、食べないっつーの、最初から。
(自分で自分に突っ込みいれちゃうとホラーの紹介っぽくないなあ(^_^;))
あと、あとがき。うーん、シリアスなホラーなのだが、どうしても田中啓文は田中啓文らしさを出さずにいられないらしい(笑)。
(2001/12/2)
「あふれた愛」天童荒太(てんどう・あらた) \1,400 集英社
TVドラマになった「永遠の仔」の姉妹編といえるでしょう。
ちょっとタイミング遅すぎだけど、ようやく読んだんで。
謝辞より
「心身の健康や、願っていた夢や理想、またかけがえのない大切な人を失いながらも、なお人への思いやりを忘れない人がいます。(中略)この本は、そうした讃えられるべき人々によって、支えられたものと信じています」
やさしい心を持つ人々の、愛を求める話です。
切なくなります。
愛があふれています。 あふれて・・・行き場を求めている。
「愛」をテーマに、真正面から愛と取り組む作家です。
この人だから書ける話です。 ひとつ間違えると、愛の洪水に苛つく話になる。
あまりに愛が重すぎて。
えー・・・正直言って、読み返す気になりません。
良い話なんだけど。
個人的には「家族狩り」がとても好みなのだが。
もうこんな話は書かないだろうなあ・・・。
コレもあくまで愛がテーマ。愛を求めて、愛し合う家族のために、殺人を犯すサイコ・キラーの話。たいへん怖い。
こういう話のほうが好きって、やっぱり私、歪んでるんだろうなあ。
(2001/12/9)
「ぼくらはみんな生きている」坪倉優介 \1,400 幻冬舎
副題:18歳ですべての記憶を失くした青年の手記
ほらほら、副題を読んだら、読みたくなったでしょう?
小説にあらず。手記です。実話です。
18歳、大学一年の坪倉優介は、雨の日の夕方、スクーターでトラックに激突、意識不明となる。
10日後、奇跡的に意識を取り戻すが、すべての記憶を失っていた。
自分の名前、両親、友人。 食べること、眠ること、ひらがな、漢字、お金というもの、人間、色、名前。
私たちが普段、あたりまえに使っている言葉がわからない。
想像もできない世界だ。
89年の事故直後には、生活する上での必要な感覚を表現することすらできなかった。お風呂に入って「熱い」「冷たい」が分からない、冷たいお風呂でもおかしいと思わずに入って震えている。「満腹」「空腹」が分からない、テーブルの上にあるものを全部食べて、苦しくなる。
私が一番考えさせられたのは、事故の前には自己主張の強い、気の強い頑固者だったのが、事故の後ではまるっきりおとなしくなってしまったということ。
主張しようにも主張すべき自分がわからないのだから当然なのかもしれないけれど、攻撃性というのは、成長の過程で身に付ける防御なのかもしれないなあと思ったのでした。
本来、人は攻撃性が必要な環境にさえ置かれなければ、好戦的な性格にはならないのかも・・・なんて、性善説を考えてしまいましたよ。
坪倉氏は現在30歳。今年5月、草木染作家としてデビューした。
よくぞここまで・・・思わずパチパチパチと拍手を送りたくなりました。
(2001/12/16)
「パートタイム・パートナー」平安寿子(たいら・あずこ)\1,700 光文社
久しぶりに、心の温まるお話でほっとできた気がする。
主人公は進藤晶生、28才。
大学を卒業してから三つの会社を転々とし、今は幼馴染みの米屋の配達を手伝って日銭を稼ぐ、プータロー。
しかし、自分ではプータローとは思っていない。本職は「パートタイム・パートナー」なのだ。或いはデート屋。
この晶生くん、とにかく無類の女好き。それもセックスとかそういうの抜きで、「女の子にやさしくするのがすき」「永遠に女なるものが、その総体がすき」という、真性女好き。
女の子の言うことには絶対反論しない。
女の子がカラスは白いといえば、世界中のカラスが白いことにする。断固として。
こんな晶生くんだから、もちろん女の子にはモテる。
ただし、恋愛向きではない。
女は優しくされるのが好きだが、誰にでも優しい男を我慢できない。自分だけに優しくして欲しい。
晶生にはそれができない。目の前に女性がいたら、優しくしないではいられない。そのときは目の前の彼女のことしか考えられない。心から、彼女をいとしく思う。
さびしいときにこんな人が隣で話を聞いてくれたら。
理想的だよね。
女性の言うことを全面的に支持してくれて認めてくれて良いところを見つけてくれて、しかも本人それを本気で言ってるんだもの。
そうは言ってもいいことばかりではありません。
世の中、慰めを求める人は多いけど、求める慰めの種類は人それぞれ。
暴力沙汰にも巻き込まれるし。
それでも晶生くんは「パートタイム・パートナー」の仕事に誇りを持っている。
求められている。ならば、応えよう。
(2001/12/23)
「サイファイ・ムーン」梅原克文 \1,600 集英社
梅原克文というのもお気に入りの作家の一人。
「二重螺旋の悪魔」「ソリトンの悪魔」(いずれもアサヒソノラマ刊)がめっちゃ面白い! 血沸き肉踊ります。
ハイ・スピード、ノンストップのアクションSF小説が読みたいときにはどうぞ。興奮するぞ!
さて、今回お奨めする「サイファイ・ムーン」。
短編集です。月をテーマにした連作4篇。プラスおまけの1篇。
月をテーマにってことで、まぁ、これはネタばれにはならんだろう、狼男とか出るわけです。月と狼ってセットものよねー。
私は月ってとても好き。ロマンチックな意味でなく、狂気を孕んでるところに惹かれます。英語で狂気をルナティックと呼びます。ルナ。月。
月の石を測定したら、最も古いものは53億年前のものだった。そして太陽系ができたのは46億年前というのが定説。つまり、月は太陽系の外から飛んできた。たまたま地球の引力に捉えられて地球の衛星になった。
・・・だから地球とは違う生命体が月に存在したかもしれない可能性だって否定できない。それが形を変え、遺伝子の奥深くに隠された能力として・・・。
わくわくしますね、こういう話。
おまけの1篇は、かの名作「アルジャーノンに花束を」のパロディですな。
「アルジャーノン・・・」ってホントあちこちでパロられてるよなー。
それだけ名作だからなんだけど。
梅原克文らしい味付けがされててシニカルで面白うございます。
(2001/12/30)
「二人のガスコン 上中下」佐藤賢一 各\1,800 講談社
三銃士のダルタニャンと、かの文士シラノ・ドゥ・ベルジュラック。
この二人が鉄仮面の謎を解く。
ちょっとわくわくしません? なんて言って、私自身は「三銃士」もシラノも読んだことないんですけど。
でもなぜか名前だけは知っているという日本人にも親しみの深いネームバリューの持ち主ですね。
で、タイトルの「ガスコン」、これはガスコーニュ地方出身者のことを言います。
シラノがガスコンを評する言葉が本文中にありますんで引用しましょう。ほとんどストーリーを要約していると言って良い。
猪突猛進のガスコンは身体を流れる血の温度が熱すぎて、自分のために生きる程度の人生ではとても命を燃やしきれない。やむなく胸に獲得するのが献身の心意気という奴で、これを無理に黙らせては熱血漢は己の証を立てられない。だから報われずとも尽くしてしまう。だから駄目な人間ばかり選んで好きになる。
「エスプリの赴くままに」
二人の熱い男たちの活劇は、ただ、エスプリの赴くままに。
佐藤賢一は文章にちょいと癖があるのと、この時代のフランスがなじめない人には、とっつきが悪いかも知れません。
あと、ちょっと女性蔑視的発言多発。しかしそれは時代の産物なので、そこまで目くじらを立ててもしかたがない。
佐藤賢一は99年の直木賞作家。だけど、受賞作の「王妃の離婚」より、「双頭の鷲」「傭兵ピエール」それに本作「二人のガスコン」のほうが、面白い!
上中下3巻が一気読み。
男意気というもの、ここにあり。 読書の楽しみ、ここにあり!
今年最後のお奨め本メールでした。 皆さま、良いお年を!